2020年06月14日

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2019年(韓国)
48分

※Eテレ「世界の教育コンテンツ 2019」にて視聴
 
 
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一般向け部門及び最優秀賞受賞作品。
 
ロボットの研究に勤しむデニス・ホンは
殆ど趣味と言える仕事に充実感を覚えながらも
家族、特に息子との時間が足りないことを
どうにかしたいと考えていた。
その解決策として、自身のボットを作ることを思い立つ---。 
  
 
デニス・ホンのボット制作の過程を追うドキュメンタリ。
制作のきっかけとなった
アンドロイドBINA48(実在する女性の思考を組み込んだアンドロイド)や
パパボット(父親のチャットボット)を作成した作家の言葉、
デニスと彼の息子・イーサンとのやり取りを通じて
「人間の思考を再現することは可能なのか」
「思考と情報はイコールなのか」
「思考と肉体(体験)は切り離して考えるものではないのではないか」
「人間を人間たらしめるものとは」
といったことへの考察が行われる。
 
デニス自身の性格や振る舞いもあって、
この重厚なテーマについて、
深刻になり過ぎずに映像が展開していくのは
大衆性という部分でとても良い。

父の哲学的な問いかけに対するイーサンの答えが
常に確信的であることが、
いろいろなことを示唆しているように思う。
 
個人として思うのは、
「完璧なボットが完成したとして、
 だけどそれは過去に生きるものでしかない」
ということなんだけど、
本当に膨大な情報と途轍もない演算から弾き出される
「ボットのモデルであればこう答えるだろう」という回答が、
モデルによる実際の回答と異なるかどうかなんてのは、
実はわかりようがないんだよね。
モデルがこの世から去ってしまえば、特に…。
その意味では
「ボットは新たな世界線を生きる」とも言えるか。
いずれにしても、
「ボットはボットでしかない」と思うのだけど、
自分が当事者としてパパボットとその製作者のようになった時に、
それでも「ボットはボットでしかない」と思えるかは怪しいし、
「たとえボットでも構わない」となる確率は高そうだ。


(16:44)